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Zuittでは、外国人技能実習生共同受入事業を推進する、イエローウイング協同組合様からの依頼で、北海道紋別郡遠軽町で水産物の加工を営む、だいいち様に対し、だいいち様で働くフィリピン人技能実習生に向けての日本語研修を提供しました。
総括として、Zuittの加藤代表に日本語研修の重要性や効果などを伺いました。
(インタビュー・大橋博之)
労働力は外国人に頼らざるを得ないのが現状
──日本語研修の現状や課題をどう、お考えですか?
加藤:いくつか種類の違う課題があるのかなと思っています。「外国人従業員が日本語を勉強する気がないから、会話が成り立たない」と言われることが多いですが、話はそう単純でないと考えています。
基礎となるのは学習意欲。「続けたい」「昇進できそう」と思える環境でないと、日本語習得意欲は高まりません。本人任せでは日本語を「習得できる」とも思いづらいです。
次は受信能力。例えば日本語能力試験(JLPT)のN5やN4程度の文法語彙では、読んだり聞いたりにはかなり制約があります。また、受信能力があっても話せない、発信能力がない人は大勢います。例えば日本人の英語力も一緒で、英語のいろんな文法を知っていても、話せないようなものです。
その他、異文化コミュニケーションや、何をいつどこでどうなぜ話すかなどの会社ごとの規範も重要です。
※日本語能力試験(JLPT)にはN1、N2、N3、N4、N5の5つのレベルがあり、最も優しいレベルがN5で、難しいレベルがN1。
──だいいち様の外国人技能実習生に対する姿勢をどう、思われますか。
加藤:私が最初にイエローウイング協同組合さんから、この日本語研修の話を伺ったとき、だいいちさんは素晴らしい雇用主だと思いました。というのは、従業員の身になって考えていらっしゃるからです。その土台があるから、フィリピン人技能実習生たちの学習意欲が湧くのだと思いますし、日本語研修が意味あるものになったのだと、改めて思いました。
やはり、根底は学習意欲です。私どもは言語能力向上のプロですが、学習者の学習意欲の有無が大きく作用します。日本語を習得し、「ここで長く働きたい」と思ってもらう後押しまでが私たちの仕事です。
逆に、外国人を雇用している会社さんが失敗しやすいのは、学習意欲を促す環境づくりだと考えています。
その要因のひとつとして、外国人労働者を雇用する会社さんは、外国人労働者は良くないという考えに凝り固まってしまっている、ということがあるように思います。
──外国人労働者へのいじめなども問題視されています。
加藤:そのようなことが起きるのは、外国人労働者を信頼していないからではないでしょうか。だから機会も与えず、態度もつっけんどん。外国人労働者はキャリアアップもできない。外国人労働者にすると「こんな会社で一生懸命に働きたくない」となり、不の循環に陥ります。
だいいちさんが好循環を生んでいるのは、外国人労働者を信頼しているからだと思います。信頼とは、「どこまで任せたら何ができるか」を把握しているということです。「この段階に行ってもらうには、どういう働きかけをすればいい」が見えている。当たり前と言えば、当たり前かもしれませんが、当たり前のことをやり切るのが難しいものです。それをやっていらっしゃるのが、素晴らしいと思います。
引き続き、信頼関係の好循環を構築する、お手伝いを
──小林様は「仕事が円滑に進むようになった」、門様は「ポジティブな影響が出てきたと思う」とおっしゃっていました。どう、お考えですか?
加藤:そのことは研修前と後に行ったサーベイの結果からも顕著に表れています。
例えば、会話スキルは、65.8から90.3と。皆さん点数が上がっています。事前では、ちょっと会話スキルが足りないかなと思った人も、A1.2と、ほぼ満点に近い数字を叩き出しています。また、読解・聴解スキルの、N5模擬試験では、24.8から35.5と点数が上がっています。1人だけ、N5レベルには達していないかも、という人も含めて、ほぼ全員が満点、もしくはそれに近い数字を出しており、力は伸びたと言えます。
研修前と後で、「まったくそうおもわない」から「つよくそうおもう」まで5段階で評価してもらい、平均値を取ったとき、「外国人、他の外国人従業員は日本語をわかりやすく話してくれる」「職場で何か問題があるときに外国人の同僚に相談する」の数値は、研修前では3.0とか3.3。これも悪い数値ではないのですが、研修後に3.5、3.8と高まっています。直接的な日本語研修の成果ではないものの、その後の外国人同士の関係性が良くなっていることが、伺えると思います。
また、先ほどの話に戻るのですが、日本語を「自分で継続的に勉強したい」という問いに対し、研修前の平均値は3.3で研修後は全員が5と、非常に高い数値になりました。入社3~4か月目で勉強したい気持ちが強いのは、良い傾向だと思います。
職場の支援で「困ったときに求める支援はどのようなものですか」という問いに対しては、「言語サポート」と答えています。「キャリア達成したい」点でも、「日本語が上手になって、日本語を教えるようになります」というような気持ちが前面で出てきています。最初の3か月間でいい自信がつき、それが業務でも私生活でもいい効果になっている。「じゃあ、これから頑張ろう」と、とても良い循環が始まってきたことが伺えると思っています。
──加藤さんは、今回、日本語研修を行ってみて、いかがでしたか?
加藤:改善ポイントがあると思いました。
「日本に何年間いる予定ですか」という問いに対して研修前は「3年間」。研修後も「3年間」と変わっていません。一方、コメントとしては「もっと日本で頑張りたいです」という声が熱いです。どうやら、キャリアとしての特定技能1号2号という制度をあまり分かっていないことが原因のようです。日本人ですら制度を理解するのは難しいのに、日本語力が不十分だと余計に難しい。弊社フィリピン人の先生の出番かと思います。
また、「職場で何か問題があったとき、日本人の同僚に相談するか」という問いに対し、3.3から3.5と、期待するほどは上がってはいない。これは日本人の上司というか、メンター、先輩的な人と、フィリピン人とがチームビルディング的なところで協力できれば、信頼関係の好循環を構築する、お手伝いができるのではないかと思っています。また、機会をいただけるとしたらぜひ取り入れたいです。
──メンター制度みたいのがあるといいかもしれないですね。
加藤:そうですね。役割分担だと思います。総てを監理団体に頼る必要はない。弊社がオンラインでサポートできれば、監理団体さんも雇用主さんも楽になるんじゃないかなと思っています。
──ありがとうございました。
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