(The English version is available.)
フィリピンでソフトウェア開発事業に取り組むSence1 Inc.様に、Zuittが提供する法人研修「ソフトスキル Element 1」を採用していただきました。
同社代表の益子智絵様にソフトスキル研修の重要性や効果などを伺いました。
●Zuittが提供する法人研修「ソフトスキル Element 1」
エンジニアに必要なスキルは大きく分けて2つあります。ひとつは「テクニカルスキル」。もうひとつが「ソフトスキル」です。
エンジニアのスキルというと、プログラミングやインフラなどのテクニカルスキルを思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、一般的な開発案件では、他のエンジニアとチームを組んで顧客のために開発を進めます。リーダーシップやコミュニケーション力、問題解決力といった測定は難しいが重要なスキルが、時にテクニカルスキル以上に案件の成否を分けます。にも関わらず、エンジニアの多くが意識的にテクニカルスキルを伸ばす一方で、ソフトスキルを積極的に伸ばそうとはしない、または、どう伸ばせばよいかわからないことが多いのが現状です。
そこでZuittでは、エンジニアのソフトスキルを向上を支援する法人研修「ソフトスキル Element 1」を実施しています。
この研修では、「1. Proactive:主体的になる」を始めとして、エンジニアが特に必須とする7つの要素に重点を当て、自立した人材に、そしてチームを率いる人材の育成を図ります。
例えば、プロジェクトマネージャーから「1週間でやって」と頼まれたタスクがあるとき、部下のエンジニアはどうすべきでしょうか?自信が持てるまで練り上げて1週間後に提出するのがよいでしょうか? それとも途中で一度、「このような感じで良いでしょうか?」と確認するのがよいでしょうか。
報連相の習慣のある日本人は後者を好みます。一方フィリピン人の多くは「中途半端なアウトプットで上司の時間を無駄にできない」と前者を好みます。正解はありませんが組織として望ましいコミュニケーションが何かは共有・徹底されるべきです。
誰がどのような質問をいつ行うべきか。誰がどう答えるか。何の仕組みが必要か?
個々人のソフトスキルを上げる前にまず組織の目線合わせが欠かせません。Zuittでは組織ダイナミクスの診断から始め、多文化リーダーシップの育成に貢献しています。
(インタビュー・大橋博之)
益子智絵
Sence1 Inc.代表取締役
独学でシステム開発を身につけ、様々なWebシステム開発に携わる。クライアントの業務改善やDX化を実現した長期プロジェクトでは、プロジェクトマネジメントやコンサルティングを担当。ベンチャー企業でシステム開発事業部を立ち上げ後、役員に昇進し全社マネジメントや人事に携わる。パンデミック下でフィリピン子会社の代表として規模を拡大させた後、フィリピンでソフトウェア開発企業を自身で立ち上げ現在に至る。
フィリピンにはソフトスキルの研修が充実してない
──Sence1 Inc.の事業内容を教えてください。
フィリピンでウェブサイトの開発事業を展開しています。アニメーションを活用した動的なウェブページや、ユーザー向けのウェブサービス系の開発を得意としています。現在、スタッフは13名。全員がフィリピン人のエンジニアです。
──益子さんの経歴を教えてください。
私は独学で開発を身につけた後、色々な業務系やWeb系のシステムの開発やプロマネやコンサルティングを担当してきました。特にシステム部門と業務部門の橋渡しをする”翻訳”が得意です。
並行して、ベンチャー企業でシステム事業部の立ち上げを任された後、役員に昇任しまして、全体のマネジメントや人事組織関連の業務にも携わりました。
そしてコロナ禍の直前にフィリピンのソフトウェア子会社の代表になりました。最長ロックダウン中にオンラインでマネジメントしつつ4倍に成長させることができました。
その後、フィリピンで独立ソフトウェア企業として起業しまして、新しい事業を展開すべく準備を進めています。
──日本とフィリピンでは経営のあり方も違うと思います。どのようなところが違うとお考えでしょうか?
今では慣れましたが、最初のころはほぼ毎日、驚くようなことばかり起こっていました。手続きが思うように進まないとか、時間通りに物事が進まないとか。日本とは違うことだらけです。そんなルーズさが合わない人はフィリピンで働くことは向かないでしょう。私は、逆に日本の細かいことを気にする体質に嫌気がさしていたので、フィリピンの方が生きやすいと感じています。それに、日本より経営者や重役に女性が多い。フィリピンは男女平等ランキングでアジアNo.1の国です。女性は仕事がしやすく、女性だからという特別という意識もありません。
──フィリピン人エンジニアのすごいところを教えてください。
日本人エンジニアはデザインが苦手という人が多いのですが、フィリピン人エンジニアはビジュアル感度が高く、センスのいい人が多いように思います。ウェブサイトの見た目やユーザービリティを考えて実装する能力は日本のエンジニアよりも優れています。
もちろん、クライアントワークではプロのデザイナーとエンジニアが組んで仕事をします。が、細かい改善提案もしてくれますし、社内ツール程度であればエンジニアがデザインもUIも考えてくれます。
また、協調性があります。チームワークは日本人よりも上手ですね。指示しなくとも自分たち同士でコミュニケーションを取ってくれています。
──なるほど。
あと、フィリピン人は同僚を家族のように思うのが好きみたいです。社員旅行も大好きです。社員旅行を催さない会社では働きたくないとすら考えています。「社員旅行はいつですか?」とよく聞かれます(笑)。
──逆に足りないところはどういうところでしょうか?
自分の意見を言ったり、確認したりするのが苦手な人が多いですね。「なぜ、確認できないの?」と聞くと「シャイだから」と答えます。仕事が遅れそうで助けが必要なときも「シャイだから助けを求められない」と。そのため、弊社では「シャイを言い訳にするのは禁止」にしています(笑)。
これは教育の問題だと思います。日本だと新入社員研修のプログラムが豊富ですが、フィリピンにはそのようなプログラムは見当たらず、そのような研修をやろうとすると自社でプログラムを作るしかありません。
──チームワークは良いのに?
フィリピン人は仲は良く、おしゃべりはよくするので、スタッフ間のコミュニケーションは取れているのですが、ビジネスに即したコミュニケーションが苦手という側面があります。
新人スタッフが加わるたびに研修を受けさせたい
──それが、Zuittのソフトスキル研修を導入しようと思われた理由ですね。
そうです。フィリピン人は日本人以上に素直で、スポンジのように技術を吸収します。教育すれば上達します。そして、自ら発言する風土を、弊社の企業文化にしなければダメだと考えました。
──ソフトスキル研修はいかがでしたでしょうか?
期待していた通りでした。社内の雰囲気の向上、活性化にとても役立っていると思います。
──スタッフの反応はいかがでしたか?
あるスタッフは、「研修を受ける前は緊張したけれど、雰囲気が良かったので、リラックスして受けることができた」と言っています。また、内容も「実際に困っていることに即していたので理解できた」そうです。
別のスタッフは、メンバーサイドとスーパーバイザーサイドの両方を受けたのですが、同じように「実務的に問題があるところを具体的に話してくれたのが良かった」と感想を言っています。
例えばスケジュールと期限を決めているのに、期限5分前にメンバーが「すみません、やはり終わりません」と言ってくる場合があります。この場合はリカバリーが難しくなります。「終わらないかもしれない」と事前に言ってくれれば手伝うこともできたはずです。
他にも言われることがあるのが「質問したかったけれど、忙しそうだったからできなかった」「こんなことを先輩に聞いて良いのかと迷った」などです。聞くかどうか迷った挙句に聞いてきてくれたころにはスケジュール的に間に合わないということもあります。
まあ、それは日本人でも同じです。パソコンの前で2時間ずっと考えていた若手もいました。先輩から「どうしたの?」と声を掛けられて初めて「これが分かりません」と質問できた、ということもありました。
一方、日本では新入社員研修などが充実しています。中小企業であっても外部の研修期間などから、ある程度の基礎を標準的に学ぶ事ができます。フィリピンにはそういった研修があまり充実していません。それに、私が教えるよりもZuittのような第三者が「こういうふうにするのが社会人として正しいことだよ」と言う方が理解してもらえます。外部研修は緊張しますが、良い意味で緊張を持って学ぶことができたと思います。
──仕事につながるような成果はありましたか?
トラブルは減りました。早めにエスカレーションするようになったので、リカバリーもしやすくなりました。それと、気になったリスクは早めに報告してくれるようにもなりました。誰かがリカバリーできるので仕事はとてもスムーズに進みます。開発業務だけでなく、社会人として仕事をやるうえで良い影響になっています。
フィリピンでオフショア開発を行っている企業は多いですが、どこも同じ悩みを抱えていると思います。私は日本でエンジニアを育ててきた経験があるので、やりやすかったですが、それでもかなり苦労しました。
──2回目の研修もお願いしようと思ったのはどうしてなのですか?
新しいスタッフを採用したので、そのスタッフに受けてもらうためです。
正直、同じ内容なら自分たちでできるんじゃないかという議論はありました。研修を受けたスタッフが新人に教えればいいんじゃないかと。
しかし、第三者に教わる、ということが大事だと考えました。第三者から「一般的にはこうだよ」と言ってもらった方が効果が上がります。上司だと聞き方、伝え方もありますし、甘えも出てしまいます。
その意味では、新人が加わるたびに研修を受けたいと考えています。
──ソフトスキル研修は、どのような企業に有効だと思いますか?
大企業も中小企業も、それこそスタートアップにも有効だと思います。大小関係なく必要な研修です。大企業だと自分たちで研修プログラムを作れるかもしれませんが、フィリピン人に適した研修を作れるかというと疑問です。
また、Zuittのソフトスキル研修はとてもインタラクティブな内容になっています。その点もとても良いと思っています。
社内でライトにできる研修を増やして欲しい
──今後、Zuittに期待することはありますか?
たくさんあります(笑)。先ほど、フィリピンには研修はなく、研修をやろうとすると自社でプログラムを作るしかないと話しましたが、Zuittさんにはぜひ、ソフトスキルのような研修プログラムを他にも開発して欲しいと思います。
日本ならエンジニア向けの案件定義の作り方や、新人管理職研修、プレゼンテーション研修など、たくさんの研修プログラムがありますが、英語圏にはありません。あっても、MBAなどのハイクラスのものなどボリュームがあってとても高価です。社内でライトな研修を行いたいとき、適した研修プログラムは見当たりません。他にも、システム設計やセキュリティ研修があればいいですね。
──会社をこれからどうして行きたいとお考えでしょうか?
現在は、日本企業からの受託開発が多いのですが、海外企業の比率を伸ばして行きたいと考えています。フィリピンには各国の外資系企業があります。また、アメリカ本土やヨーロッパにある企業だと時差の関係で仕事がし難いですが、時差の差が少ないシンガポールや香港、オーストラリアなどの企業との取引を増やして行きたいと考えています。
──フィリピンでの成長性をどうお考えですか?
世界的にエンジニアは不足していて、特に日本では少子化の影響もあり採用が難しくなっています。新卒エンジニアに1,000万円を払う企業も出てきています。国内だけではリソース不足を解消できません。そのため既に多数の企業がオフショアで開発を開始しています。
一方でオフショアエンジニア=安価に使える、という発想がまだ根強いです。英語ができるエンジニアは日本以外のどこに行っても通用します。国際的にも給料は高騰しています。しかも日本以外の多くの国はインフレです。安く使うという発想ではなく、人材不足を補うという概念でなければ海外人材でさえ採用は益々難しくなるでしょう。
──最後に、これからの夢を教えてください。
会社の規模を急激に大きくするより、スピード感を持った少数精鋭で小回りのきく会社を作っていきたいです。
スタッフに関しては、自分達で開発をしてサービスを回していけるような人材に育って欲しいと思っています。私が指示をしなくても自分たちで考えられるようになって欲しいですね。
──貴重なお話、ありがとうございました。
ソフトスキル開発は継続的なプロセスです。1回きりの研修で終わるのではなく、コミュニケーション、コラボレーション、対人スキルの継続的な向上を期待、評価し、サポートする文化を作ることが重要です。
企業研修を通じて従業員のソフトスキルを高めることにご興味はありませんか?zuitt.co.までお問い合わせください。